DC-1000は、アキュフェーズ創立50周年記念モデルのディジタル・プロセッサーです。
フラグシップ・モデルとしてこれまでのノウハウを全て受け継ぎ、伝統の技に先進の技術を結集し完成しました。
ESSテクノロジー社製「ES9038PRO」を8回路並列に駆動させる、8MDSD(DSD信号)/8MDS++(PCM信号)方式D/Aコンバーターを搭載、理論上の性能は1回路に比べ約2.8倍に向上。IV変換回路には独自の「ANCC」を搭載。極めて高い変換精度と、低ひずみ・低雑音を可能にします。DC-1000は、あらゆるディジタル・ソースの音楽情報を余すところなく描き出す、性能・音質を究めた超弩級のディジタル・プロセッサーです。
●高周波ノイズを除去するD/Aコンバーター
・『MDSD:Multiple Double Speed DSD』
DSD信号は、ノイズ・シェーピングにより、可聴帯域より高い周波数に押し上げられた量子化ノイズを大量に含んでいます。
DSD信号を正確なアナログ信号に変換するためには、この高周波ノイズをローパス・フィルターで除去しなければなりません。
ところが、DSD信号は直接ディジタル・フィルターで処理することができないため、従来のD/AコンバーターICでは、DSD信号を一旦PCM信号に変換し、
その後ディジタル・フィルターに入力することで高周波ノイズを除去していました。
一方、DC-1000が採用しているMDSD方式は、DSD信号をPCM信号に変換することなく、高周波ノイズを除去するローパス・フィルターとしての役割を果たす、画期的な回路方式です。
MDSD方式では、DSD信号をFPGA(プログラム可能な論理ゲート)に入力し、1/2クロックずつタイミングの異なる8種類のDSD信号を生成します。
この8種類のDSD信号をそのまま8回路並列動作の『MDS++方式D/Aコンバーター』に入力することで、理想的な完全直線位相特性のローパス・フィルターとしての役割を担わせ、
可聴帯域より高い周波数のノイズを除去しながら、正確なアナログ信号へと変換します。
つまりMDSD方式は、DSD/PCM変換を経ることなく、高周波ノイズを除去するローパス・フィルターとしての機能と、8回路並列『MDS++方式D/Aコンバーター』の変換誤差を打ち消す効果を兼ね備えた、
画期的なD/Aコンバーターです。
内部レイアウト
●MDSDの優れた性能と高い信頼性を確保する理想的なパーツ・レイアウト
MDSDの優れた性能を効果的に発揮するために、DACとI-V変換回路の距離を可能なかぎり短くすることで、配線パターンでの悪影響を排除しました。
I-V変換回路には、プリアンプC-3900にも採用している低ノイズ・低ひずみ化技術ANCC(Accuphase
Noise and distortion Cancelling Circuit)を搭載。
このI-V変換回路を4回路並列駆動させ、8回路並列駆動『MDS++方式D/Aコンバーター』の大出力電流を分散処理することで、熱の集中を避け、信頼性や耐久性を確保。
また、パワーアンプA-250の設計思想と同様に、前段に位置するI-V変換回路の出力電圧を従来よりも大振幅化し、
後段のフィルター・アンプで発生するノイズの影響を相対的に低減することで、ノイズの性能を更に向上させています。
アクティブ・フィルター・アンプ
●モノフォニック構成のアクティブ・フィルター・アンプ・アッセンブリー
5次のバターワース型LPFのうち、後段に位置する2種類の2次LPFを搭載するのが、アクティブ・フィルター・アンプ・アッセンブリーです。
このアッセンブリーの回路構成は、チャンネル・セパレーションに大きな影響を与えます。
アクティブ・フィルター・アンプ・アッセンブリーには、左右の回路が十分な距離を保つように配慮したモノフォニック構成を採用し、チャンネル・セパレーションの悪化を防いでいます。
また、電源やGNDパターンについても左右独立構成にすることで、相互干渉を防止しています。
8回路並列駆動の『MDS++方式D/Aコンバーター』
●8回路並列駆動の『MDS++方式D/Aコンバーター』
D/Aコンバーターに驚異的な性能・音質を誇る『MDS++方式D/Aコンバーター』を搭載しました。
MDS++方式は、刄ー(デルタ・シグマ)型D/Aコンバーターを複数個並列接続することで、大幅な性能改善を図った画期的なコンバーターです。
刄ー型D/Aコンバーターを複数個用意して、同じPCM信号を各コンバーターに入力、その後各コンバーター出力を加算して全体の出力とします。
全体の出力では、信号成分は単純加算されますが、変換誤差には相関が無く、相互に打ち消されるため、単純加算した値よりも小さくなります。
従って、信号と変換誤差の比が大きくなり、変換精度やSN比、ダイナミック・レンジ、リニアリティ、高調波ひずみなど、コンバーターにとって非常に重要な特性を一挙に向上させることができます。
8回路の高性能『ハイパーストリーム?DAC』(ES9038PRO:ESSテクノロジー社製)を並列動作させていますので、コンバーター1回路の場合に比較し、
ひずみ率、雑音特性、直線性など全体の性能は約2.8(=√8)倍に向上します。
なおDSD信号の場合には、各コンバーターにタイミングをずらして入力することで、高調波ノイズを除去するMDSD方式のD/Aコンバーターとして動作します。
D/Aコンバーターを8回路並列に動作させると、大量の電流が出力されます。この大電流を一度に加算するとI-V変換アンプに熱が集中し、回路の動作が不安定になってしまいます。
そこでDC-1000の『8MDS++方式D/Aコンバーター』では、D/Aコンバーターが出力する8並列の電流信号を、最初に2本ずつ電流加算して4並列の電流信号に変換します。
次に、4並列化されたI-V変換アンプで、4並列の電流信号を4並列の電圧信号に変換します。最後に、4並列の電圧信号を1本の電圧信号へと電圧加算します。
このようにDC-1000の『MDS++方式』では、I-V変換アンプを挟んで電流加算と電圧加算を巧みに組み合わせることで、大電流加算によるI-V変換アンプへの熱の集中を避け、
負荷を軽減し、安定度を高めています。その結果、諸特性が向上し、高い精度でD/A変換が行われ、より緻密な音楽描写が可能になります。
● 新開発『Dual Direct
Balanced Filter』
ライン出力とバランス独立出力『Direct Balanced Filter』回路を2回路並列で動作させる新開発『Dual
Direct Balanced Filter』回路を搭載。相互の干渉を抑え、より理想的な性能と音質を実現しています。
●性能と信頼性を向上させる『Dual
Direct Balanced Filter』回路専用電源
5次のバターワース型LPFの出力段である「Dual Direct Balanced Filter」は、性能と音質に特に大きな影響を与える重要な回路です。
そこで、本機では「Dual Direct Balanced Filter」回路に専用電源を設けることで、他回路からの出力信号への干渉を防いでいます。
また、電源電圧を最適化することで、回路の発熱を抑え、構成部品の信頼性を向上させています。
●ディジタル/アナログ独立構成の低雑音電源
回路のエネルギー源となる電源のクオリティは、音質に大きな影響を与えます。放熱フィン付き鋳造アルミケース入りの高効率トロイダル・トランスをディジタル/アナログに分け2個搭載。
トロイダル・トランスは、ドーナツ状のコアに太い銅線を巻くため、インピーダンスが非常に低く、変換効率が極めて高いので、オーディオ用として優れた特性を備えています。
また、新たに10,000μFの大容量・高音質フィルター用アルミ電解コンデンサーを開発、ディジタル/アナログそれぞれに4個ずつ搭載、負荷変動に強い余裕のある電源を搭載。
●ディジタル回路とアナログ回路の相互干渉を抑え、振動を抑制する堅牢な構造体
アナログ回路とディジタル回路をアルミニウム製フレームにより分離する内部レイアウトを採用。
これにより、性能に悪影響を与えるディジタル回路とアナログ回路の電気的な干渉を抑制。
また、これらのフレームとアルミニウム製ボトム・プレートを縦/横方向に組み合わせることで堅牢な構造体を構成し、外部からの物理的な振動も抑制。
●『本木目』鏡面仕上げのウッド・ケース
厳選した美しい自然木を使い、専門職人が匠の技で一点ずつ丹精込めて製作した『本木目』鏡面仕上げのウッド・ケースに収納。
このウッド・ケースとシャンパン・ゴールド色のフロント・パネルを調和させることで、重厚でありながら優美さを併せ持つ日本の伝統美を表現しています。
●重量級ボトム・プレートとアドバンスド・ハイカーボン鋳鉄製の高音質インシュレーターを採用
外部の振動を受けにくくする制振構造を目指し、8mm厚の重量級ボトム・プレートと全体を支える4個の鋳鉄製の重量級大型インシュレーターで低重心化を図っています。
インシュレーターは、ハイカーボン鋳鉄に特殊な熱処理を施すことで結晶構造を変化させて硬度をアップ、さらに振動減衰特性の優れたアドバンスド・ハイカーボン鋳鉄を採用。
これにより外部からの振動を遮断し、微小信号への影響を防いでいます。
●5種類8系統の豊富なディジタル入力端子
5種類8系統の豊富なディジタル入力端子を装備していますので、様々なディジタル機器を同時に接続し、フロント・パネルまたはリモート・コマンダー(DP-1000に付属)で切り替えが可能です。
【 DC-1000 特徴 】
●ESSテクノロジー社のES9038PROを8回路並列駆動する「MDS++変換方式D/Aコンバーター」搭載
●ノイズや歪を打ち消す独自の回路構成「ANCC」をIV変換回路に搭載
●部品配置と基板構成を全面的に見直してDAC出力の最短経路化を実現
●アクティブ・フィルター・アンプに低誘電率・低損失ガラス布フッ素樹脂基材を採用
●ディジタル部とアナログ部を分離した2個の高効率トロイダル・トランスと
●合計80,000μFのカスタム高音質フィルター・コンデンサー
●HS-LINK(Ver.1,Ver.2対応)、BALANCED、COAXIAL(3系統)、OPTICAL(2系統)、USB
●豊富な入力端子を装備
●ディジタル出力端子はCOAXIALとOPTICALを各1系統
●視認性が向上した大型7セグメント表示器
●サンプリング周波数とビット数をディスプレイ表示
●バランス出力の極性切替スイッチ
●優れた振動減衰特性を実現したアドバンスド・ハイカーボン鋳鉄製の高音質インシュレーター
●厳選した自然木を使い、専門職人が丹精込めて製作した『本木目』鏡面仕上げのウッド・ケース
●5芯のマルチ導体を採用した音質重視の電源コード《APL-1》